信用の前提をおかない社会システムの可能性

Oishi Tetsuyuki

 

ビットコインは、信用の前提を置かないでも取引ができる仕組みである。

多くの人が悪人で、日常的に嘘や不正を働こうとしている中でも、それでもビットコインの取引は動く。そして、なにかの権威を信頼する必要もなければ、管理者を置く必要もない。

 

つまり、完全なる性悪説の中でも動くシステムという意味で、きわめて画期的だとおもう。

 

これが社会そのものに応用される可能性を考えている。実際には長い時間がかかるとおもうが、貨幣システムや契約といったグローバリゼーションが進んでいる部分から、こういった信用の前提をおかない仕組みに移行していくだろう。

 

グローバリゼーションでは、1つの国家がすべてを支配しているわけではなく、そもそもどこか1つの機関や法律に信用を置くことができない。

 

信頼できる中央機関を国連などに置こうとする考えがあるが、失敗してきた。世界は、むしろ、どんどん分裂する方向に向かっている。

 

この、信用の前提をおかない、という話をすると、多くの普通の人は反射的に懸念を示す。つまり、人間を信用しないというのは危ないということ。

 

「人間を信用したほうが安全」

 

というのは、人類の古層に刻み込まれた感覚だ。相手を信頼し協力することで生き延びる確率を上げてきた人間にとっては、信頼というのは、DNAレベルで刻み込まれたエンジンなのであって、信頼のほうが安全だと思う感覚は本能的なものだ。

しかし、それでも

 

「最悪の災いの根本原因は、人間を信頼したことで起きている」

 

とも思える。独裁者、ナチズム、共産主義。これらは権限を一箇所に委譲して、信頼してみたものの、見事に裏切られた例である。人間は、信頼の動物でもあると同時に、きわめて残忍で、利己的で、どうしようもない。

 

もちろん、そういう人間がまだまだ修行不足で、本来は、完璧で不正をせずモラルに則った人々による信頼社会がベストなのは私もわかるが、そのようなスーパー人格者に、全員がなれるとはとても思えないのである。

 

実際に、モラルをいくら叫んでもここ数千年の歴史を客観的にみてみても、人間のモラルが向上しているとは、とても思えない。そして、今後も数千年にわたって、人類のモラルが改善されるとは到底思えない。

 

ならば、人間にまかせておくのが最も危険である。

 

もちろん、スーパー人格者が統治するのが一番よい。絶対に間違えず、裏切らず、信頼の置ける人だ。

 

ようするに、それを、西洋やでは「神」と呼ぶ。

 

神だけが信頼でき、人間は不完全である。これが西洋的な社会の基盤にある。

 

日本の考え方は、逆で、神のような絶対的なものをおかず、ムラ社会でのコンセンサスを社会の基盤としている。不完全な人間を前提においた西洋的な考え方とは、大きなギャップがあり、そこがビットコイン的考えが日本人にすんなりとは理解できない理由だろう。

 

 

前説が、長くなったが、わたしたち人類が、歴史の悲劇を繰り返さないためには、人間の上に、なにかのルールを置くべきだ。

 

究極的にはそれは全知全能の神だが、それは概念的なものであるので、実際にわれわれに関与してくるものが必要だ。

 

一般的にいえば、それは法律だろう。

 

法の支配という仕組みは、国家や人間の上に、抽象的な法というものを置いた。憲法で、国を縛り、抽象的な法律という枠組みて権力を監視する。人間の上に抽象的なルールである法律を置くという考えは、キリスト教文明の発明のひとつだろう。

 

現在の社会は、法の支配が失われつつある危機を示している。法の支配も人間が運用しているのであるから、相当に注意しないと、あっという間に失われてしまう。日本では、世間の空気が法律を凌駕して世の中を支配してしまっている。

一方、ビットコインでは、法律にあたるものはプロトコルであり、プログラムであり、それを執行しているのは、コンピューター資源(採掘者)だ。

 

いまのところ、ビットコインにおける法の支配は、きわめて強固だ。

もちろんいままで積み重ねてきた社会システムには程遠いが、これを延長したら、もしかしたら、社会の基盤をブロックチェーンのような信用の前提がいらない仕組みに、かなりの部分を移行できるのではないか。(ブロックチェーン上の未来国家Bitnationにつながる発想)

 

人間に信用をおかず、コンピュータプロトコルが社会を監視して執行するという世界であり、人間のうえにプロトコル(ルール)を置く考えだ。

 

これを言うと話は元に戻ってしまう。

 

それは危ない、コンピュータに人間が従うなんて危ない、人間のほうが信頼しないとダメだ、みたいな話を言い出して話は元に戻る。

 

が、わたしは、あえて法の執行やコンプライアンスという領域では、人間の上に、だれか一人の人間の手ではかえられないブロックチェーンのような数理的な支配者を置くほうが良いのではと考えている。

 

そして、この社会基盤が世界中に浸透すれば、おそらく、戦争がなくなるだろう。それがどうしてかは、いまは明確な論理にすることはできてないが、グローバルな法の支配は、世界の平和を実現するはずだ。

 

コアなビットコイナーには、平和主義者が多い。人間のモラルにたよった空想的平和主義ではなく、モラルなき人間がモラルなき振る舞いをする社会にお いても、戦争がおこらず、独裁的な軍事力にたよることなく、安全に取引ができ、平和が維持できる社会が訪れることを、わたしは夢見ている。

 

それにはまだ100年くらいかかるだろうが、来るべき社会を構築する最初のイノベーションの時代に生まれたことを感謝したい。

から撮影:http://doublehash.me/512

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Erik Vollstädt

Bitnation Lead Ambassador and Community Director. Born 1993, aspiring entrepreneur and champion of voluntary societies & private property ethics. Proponent of counter-economics and competing market currencies, such as cryptocurrencies. Represented Bitnation as Lead Ambassador since 2015 at the Riga Bitcoin and Cryptocurrencies Meetup, the iBGEk basic income stage discussion in Klagenfurt (Austria), the Cointelegraph Blockchain Conference in Helsinki, the Zündfunk Netzkongress in Munich, at itnig for the Barcelona Bitcoin Community during the Mobile World Congress 2017 and at the Bitnation DevCon 2017 in Amsterdam. Author of the Bitnation blog. Media appearances include Shift (Deutsche Welle), Der Fehlende Part (RT Germany) and Zündfunk (BR2). Coordinates Bitnation's ambassador network globally and organizes meetups all over Europe. Graduated in Business Innovation & Technology Management (M.Sc.) in Girona (Catalunya, Spain). Wants to live an international lifestyle.

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